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相続人がいないとき、どうすれば良いの?

皆様、こんにちは。
今回の青山通信は、相続財産管理人に関する情報をお届けします。

 

 


 

 

こんにちは、弁護士の柴澤です。

 

 

 

ご親戚の中に、生涯独身の方はいらっしゃらないでしょうか?

 

 

ここでは、わかりやすく、生涯独身の方を「Aさん」といいますが、Aさんが亡くなった場合、両親、祖父母、兄弟姉妹の順に相続人となります(民法889条1項)。

 

 

ただ、Aさんが高齢だと、両親や祖父母がすでに亡くなっていることが多いでしょう。

 

 

そうすると、Aさんの兄弟姉妹が相続人になりますが、Aさんに兄弟姉妹がいない場合や兄弟姉妹はいたけれども独身ですでに亡くなっている場合などには、一見すると、Aさんの相続人はいないように見えます。

 

 

この場合、「相続人のあることが明らかでないとき」に該当し、Aさんの預金などの遺産(相続財産)は、法人となります(民法951条)。

 

 

ところで、Aさんのような方については、ご親戚の方が通院の付き添いや身の回りの世話をすることがままあります。そして、ご親戚の方(ここでは「Bさん」といいます。)が、Aさんの死後、Aさんの入院費を立替払いすることもあります。

 

 

Bさんが、Aさんの預金から立替払いした入院費を回収したいと考えた場合、どのような手段をとれば良いでしょうか。

 

 

 

 

 

Bさんは、まず、家庭裁判所に、相続財産管理人の選任の申立てをする必要があります(民法952条1項)。

 

 

家庭裁判所は、この申立てが相当であると認めた場合には、相続財産管理人(弁護士)を選任し、以後、相続財産管理人がAさんの相続財産を管理することになります。この選任については、官報で公告されます(民法952条2項)。

 

 

公告の後2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産管理人が、相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内に(2か月とするのが一般的です)その請求の申出をすべき旨を公告します(相続債権者及び受遺者に対する請求申出の催告。民法957条1項)。被相続人に債権を有していた債権者は、その期限までに、債権の届出をする必要があります。

 

 

Bさんは、書面にBさんの住所、氏名、連絡先、被相続人の氏名、入院費用の額及び債権を届け出る旨記載し、入院費用の領収書の写しを添付したうえで、相続財産管理人に送付すれば足りるでしょう。相続財産管理人に公告期間満了日を確認するなどして、届出期限には注意しておく必要があります。

 

 

相続財産管理人が、証拠資料を見て、Bさんが債権者であり、債権額についても間違いがないと判断した場合には、入院費用の立替金相当額を支払ってもらえるでしょう。ただし、返済原資がないことを理由に立替金相当額を支払ってもらえないこともあります。

 

 

相続債権者及び受遺者に対する請求申出の催告の公告期間満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所が、相続財産管理人の請求によって、一定の期間(6か月以上)内にその権利を主張すべき旨を公告します(相続人捜索の公告。民法958条)。この期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人の不存在が確定します。

 

 

相続人の不存在が確定した後、家庭裁判所は、相当と認めるときは、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者)の請求によって、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができます(民法958条の3第1項)。

 

 

Bさんは、Aさんの通院の付き添いや身の回りの世話をしていたため、特別縁故者として財産を分与してもらえる可能性があります。

 

 

なお、相続財産の分与の請求は、家庭裁判所への申立てによって行います。この申立ては、前述した相続人捜索の公告期間満了後3か月以内にする必要がありますので(民法958条の3第2項)、注意が必要です。