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行政処分をしたいけど…理由はどの程度記載すればいいの?

皆様、こんにちは。
今回の青山通信は「行政処分における理由の提示」です。

 

 


 

 

皆様こんにちは。弁護士の柴澤です。

今回は、地方公共団体の職員の方向けに、行政処分における理由の提示に関する情報をお届けしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

1 理由の提示とは

 

 

 

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならないのが原則です(行政手続法8条1項本文)。

 

上記処分を書面でするときは、処分の理由は、書面により示さなければなりません(同条2項)。

 

 

 

また、不利益処分についても同様の規定があり、行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならないのが原則です(行政手続法14条1項)。

 

この場合も、不利益処分を書面でするときは、処分の理由は、書面により示さなければならないとされています(同条3項)。

 

 

 

このような規定が設けられている趣旨は、

行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制する

とともに、

処分の理由を名あて人に知らせて不服の申立てに便宜を与える

という点にあります。

 

 

 

 

理由の提示が不十分である場合、当該処分は、たとえ結論に影響がないとしても、違法なものとして取消しの対象となります(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁)。

 

 

 

 

 

 

 

2 違法性の判断枠組みは?

 

 

 

それでは、どの程度理由を示さなければならないのでしょうか。

 

 

判例は、不利益処分の理由の提示について、どの程度の理由を提示すべきかは、上記のような趣旨に照らし、「当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである」と判断しています(前掲・平成23年判決)。

 

 

また、その後の裁判例では、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合についても、判例の判断枠組みを踏襲し、「当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る審査基準の内容及び公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである」とするものがあります(例えば、東京地裁平成29年10月12日判決など)。

 

 

 

 

裁判例をみると、どの程度理由を記載すべきかについてはケースバイケースといわざるをえません。

 

 

 

前掲・平成23年判決のように、事実関係と根拠法条のみの記載ではいかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって処分が選択されたのかを知ることはできないとして違法と判断する事例もありますし、

 

他方で、

 

運転免許取消処分の事案で、取調べ時の事情を考慮して、「処分の根拠法条 道路交通法第103条第1項第5号 違反(事故)発生年月日 H26.8.27 違反行為の種別等 交差点安全進行 事故名・種別 死 点数 15」との記載のみで適法と判断した事例もあります(東京地裁平成28年12月9日判決)。

 

 

 

 

 

 

 

3 結局のところ、どの程度の記載が必要なのか?

 

 

 

結局のところ、処分の名あて人が理解できるような記載がされているかどうかといった観点から違法性の有無を判断することになると考えられます。

 

 

したがって、行政処分の効力について争いになることを防止するためには、

 

 

根拠規定となる条文の条番号

 

根拠条文及び審査基準・処分基準の内容(どのようなルールになっているか)

 

あてはめ(どのような事実関係があると判断したのか、また、なぜ②のルールが適用され又は適用されないと判断したのか)

 

 

を記載することが望ましいといえるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

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