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職場におけるハラスメント対応(第1回)

皆様、こんにちは。
今回の青山通信は、職場におけるハラスメント対応に関する情報をお届けします。

 

 


 

 

 皆様こんにちは。弁護士の若槻です。

 

 

 2020年6月1日より改正労働施策総合推進法が施行され、職場におけるパラーハラスメント防止措置が事業主の義務になりました。

 

 そこで、使用者側より労務問題の相談を受ける弁護士の立場から、全4回にわたり、職場におけるハラスメント対応をお伝えしたいと思います。

 

 

 

<今後の連載予定>

 

 

第1回(今回) 指針を踏まえ、パワーハラスメントの防止措置を整えましたか?

 

第2回 パワーハラスメント防止措置のうちの「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」の具体的内容は?

 

第3回 「相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」の具体的内容は?

 

第4回 「職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」の具体的内容は?/「そのほか併せて講ずべき措置」の具体的内容は?

 

 

 

 

第1回 指針を踏まえ、パワーハラスメントの防止措置を整えましたか?

 

 

 

1 指針とは何か?

 

 

 労働施策総合推進法第30条の2の第3項を受けて、パワーハラスメントの防止に向けて、事業主が講ずべき措置等について厚生労働大臣が定めた指針(令和2年厚生労働省告示第5号)をいいます。

 

 

 指針の全文は、厚生労働省のHPに掲載されています。A4で25頁です。少なくとも企業の担当者においては全文を読まれた方がよいと思います。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf

 

 

 

2 事業主の講ずべき措置とは何か?

 

 

   指針では、事業主が講ずべき措置を次のとおり定めています。

  ①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

  ②相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  ③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

  ④そのほか併せて講ずべき措置

 

 

 

3 中小企業でも防止措置を整える必要があるのか?

 

 

 防止措置の義務化については、労働施策総合推進法の附則において、中小事業主に関する経過措置が定められています(第三条参照)。

 

 

 すなわち、以下で規定する中小事業主については、防止措置は2022年4月1日から義務化され、それまでは努力義務とされています。

 

 

  <中小事業主の範囲>

 

 

   ①小売業を主たる事業とする事業主

    資本金の額又は出資の総額が5000万円以下である

    又は

    常時使用する労働者の数が50人以下である

    のいずれかを満たす事業主をいう。

 

   ②サービス業を主たる事業とする事業主

    資本金の額又は出資の総額が5000万円以下である

    又は

    常時使用する労働者の数が100人以下である

    のいずれかを満たす事業主をいう。

 

   ③卸売業を主たる事業とする事業主

    資本金の額又は出資の総額が1億円以下である

    又は

    常時使用する労働者の数が100人以下である

    のいずれかを満たす事業主をいう。

 

   ④その他の業種

    資本金の額又は出資の総額が3億円以下である

    又は

    常時使用する労働者の数が300人以下である

    のいずれかを満たす事業主をいう。

 

 

 

4 努力義務である間は、防止措置を整えなくても良いのか?

 

 

 

 努力義務である間は、防止措置を整えなくとも労働施策総合推進法違反にはなりません。

 

 しかしながら、事業主には、一般に労働者に対して安全配慮義務を負いますので、パワーハラスメントに係る行為により労働者の生命、身体等が害された場合には、事業主の対応次第では安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

 

 

 パワーハラスメントの防止措置は、働きやすい職場環境を整えることに他なりませんので、コンプライアンスの観点に加え、労働力不足が深刻化していく中、自社の働きやすさをアピールする観点からも、中小事業主であっても早めに対応されたほうが得策であると考えます。

 

 

 

5 まとめ

 

 

 時間的な優先度は低いかもしれませんが、重要度の高いタスクといえます。一刻も早い対応をご検討ください。