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相続法改正連続講座第4回~遺産の一部分割~

皆様、こんにちは。
今回の青山通信も、相続法改正に関する連続講座をお送りします。
第4回のテーマは「遺産の一部分割」です。

 

 


 

 

皆様こんにちは。

弁護士の栁瀬でございます。

今回は、令和元年7月1日から施行された「遺産の一部を分割する制度」についてご紹介いたします。

 
 
 
 
 
1 改正内容
 
 
 
 

 遺産分割協議の際、“遺産の一部だけを協議によって分割すること”(以下「遺産の一部分割」といいます。)については、改正前の民法に明文規定はありませんでした。しかしながら、解釈上、当事者間での合意があれば遺産の一部分割は可能と解されていました。

 

 

 遺産分割事件の早期解決のためには、争いのない遺産から先に一部分割を行う方法は有益です。上記のとおり、実務上も、一定の要件下での遺産の一部分割は許容されると解されていました。このため、今回の改正で、遺産の一部分割について民法で明記されることになった次第です。

 

 
 
 
 
 
 
2 改正による影響
 
 
 
 

 遺産の一部分割が明文化されたことにより、預貯金から先に分割をする争いのない遺産を先に分割して早期の遺産分割の成立を目指す、といった利用が促進されるのではないかと考えられています。

 

 

 また、遺産分割審判では、遺産の一部分割の場合、一部分割をすることに合理的な理由があること(必要性)と、一部分割により遺産全体についての適正な分割が不可能とならないこと(許容性)が要件とされていましたが、今回の改正により、必要性の要件は不要となり、許容性の要件は改正民法第907条2項但書で明文化されました。遺産分割審判は、より柔軟に運用できるようになったのではないかと考えられています。

 

 

 他方で、遺産の一部分割により、相続人間で争いのない遺産や、関心の高い遺産の分割が先行し、利用価値の低い山林や、空き家のような遺産は分割されず、事実上放置されてしまうのではないかとの懸念も示されています。この点については、相続によって山林や空き家が共同相続人の共有になること自体には変わりがないため、一部分割の明文化と上記のような弊害は必ずしも直結しないともいわれています。

 

 
 
 
 
 
 
3 まとめ
 
 
 

 

 以上のとおり、遺産の一部分割は、これまで解釈によって認められていた制度を明文化したものです。もっとも、争いのない遺産から一部分割を行う場合であっても、一部分割の範囲や、遺産分割の手順、遺産分割協議書の作成等、どのように対応すればよいのか分からずに悩む場面は多いと思います。特に、トラブル回避の観点からは、遺産分割協議書において、一部分割であることや一部分割が残余財産の分割に影響があるかどうかを明確にすることが重要となります。

 

 

 

 当事務所では、遺産分割に関するご相談にも対応しております。是非お気軽にご相談ください。