よくあるご質問
01
会社を再建するための方法
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会社の経営が苦しいのですが、会社を再建するための方法を教えてください。
会社の経営が悪化していくプロセスは、①損益の悪化(PLの悪化)、②財産の悪化(BS)、③資金繰りの悪化(キャッシュフローの悪化)となります。各段階において必要な対策を講ずる必要があります。
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損益の悪化(PLの悪化)段階においては、どのようなことをしたら良いのですか。
損益の悪化の段階においては、損益を改善させるための方策を検討することになります。売上を増加させることも大切ですが、売上を増加させることは現実には難しいですので、原価や販売管理費をコントロールするなどして、利益を出すことに注力するという視点が大切であると言われています。
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損益の悪化(PLの悪化)段階において、どのようなサポートを受けることができるのですか。
当事務所は、経営者と一緒になって、損益悪化の原因を検討し、必要な方策をアドバイスします。損益の改善策として、これまでの取引ルール(販売先、仕入先等)を変更しようとする場合は、契約違反の問題等が生じる可能性があります。また、リストラを行う場合には労務問題が生じる可能性があります。
当事務所は、法令や契約書等をチェックするなどして、取引ルールの変更に伴う法律上の問題点を検討のうえアドバイスします。また、リストラに伴う労務問題についても経営者の立場にたってアドバイスします。
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財産の悪化(BSの悪化)段階においては、どのようなことをしたら良いのですか。
財産の悪化の段階では、損益の悪化を止めるだけでは足りず、さらに、財産状態を改善させるための方策を検討することになります。遊休資産を売却して、有利子負債を圧縮する方法などが一般的ですが、①増資をするという方法、②負債の一部をカットしてもらうという方法もあります。
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財産の悪化(BSの悪化)段階において、どのようなサポートを受けることができるのですか。
当事務所は、経営者と一緒になって、財産状態を改善させるための方策を検討し、必要な方策をアドバイスします。例えば、資産売却を行う場合には、資産売却に伴う法律上の問題点の検討や売買契約書のチェック等を行います。また、増資の場合においては増資計画の策定、会社法上の諸手続についてアドバイスします。負債の一部のカットを求めたい場合については、その対象や方法等についてアドバイスします。
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資金繰りの悪化(キャッシュフローの悪化)段階においては、どのようなことをしたら良いのですか。
資金繰りの悪化の段階では、とにかく資金ショートを避けるための方策を検討することになります。資金ショート=倒産ですので、早急な対策が必要になります。
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資金繰りの悪化(キャッシュフローの悪化)段階において、どのようなサポートを受けることができるのですか。
当事務所は、経営者と一緒になって、資金繰りを改善させるための方策を検討し、必要な方策をアドバイスします。具体的には、①資金繰り表の作成、②資金ショートを避けるための支払いの優先順位の検討、③債務の返済猶予(リスケジュール)の検討等を行います。法人・事業者の代理人として金融機関等とリスケジュールの交渉を行うこともあります。
資金ショートが避けられれば、事業の継続、再生の可能性はありますので、早めにご相談ください。
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会社の経営が苦しくなった場合、どの段階で弁護士に相談すれば良いのですか。
早めにご相談いただいたほうが対策の選択肢が広くなります。弁護士に対する相談の時期は遅くなりがちですが、当事務所は、早い段階からのサポートを心がけていますので、会社の経営が苦しくなってきたなと感じたら早い段階でご相談ください。
02
リスケジュールの方法
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リスケジュールとはどのようなものですか。
一般的に、リスケジュールとは、金融機関からの借入金について、元金の弁済の全部又は一部を一定期間猶予してもらうことをいいます。
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リスケジュールはどのような場合に行われるのですか。
元金を約定どおり支払ったのでは、将来、資金ショートに陥る可能性がある場合などです。
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リスケジュールをするメリットはどこにありますか。
リスケジュールは通常元金のみが対象であり、利息は従前どおり支払わなければなりませんので、直ちに損益や財産の改善にはつながりません。リスケジュールのメリットは資金繰りを安定させ、資金ショートを防ぐことにあります。
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リスケジュールだけで経営を改善させることはできますか。
リスケジュールだけで経営を改善させることはできません。損益の改善策、財産の改善策を伴うことが必要になります。
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リスケジュールの期間を教えてください。
リスケジュールは金融機関との合意により行いますので、その期間はケースバイケースです。当事務所が関与している案件でも、6か月や1年など、事案に応じて異なっています。
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リスケジュール期間の延長は認められますか。
ケースバイケースですが、リスケジュール期間の延長が認められる場合もあります。もっとも、延命を図るためだけのリスケジュール期間の延長は、リスケジュールの本来の趣旨に反することになりますので注意が必要です。
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リスケジュールのポイントはどこにありますか。
リスケジュールの目的は資金繰りを改善、安定させることですので、無理のない資金繰りの計画を作成することがポイントになります。特に、リスケジュール期間中の新規融資は事実上困難ですので、リスケジュール期間中に更なる資金不足に陥らないように注意してください。
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リスケジュールはどのように行うのですか。
リスケジュールは金融機関との合意により行うものですので、金融機関にリスケジュールの申込みを行うことになります。会社から個別に申し込む方法、代理人を通じて申し込む方法、公的機関を通じて申し込む方法、メインバンクを経由して申し込む方法などがあります。会社の規模、金融機関の数、債権額等を踏まえて最適な方法を検討することになります。
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債務の履行を延滞してしまい、債権が信用保証協会やサービサーに移ってしまいましたが、リスケジュールをすることはできますか。
期限の利益を喪失していますので、一般的なリスケジュールとは異なりますが、事業継続を前提に分割弁済を行うことにより、事実上、リスケジュールと同様の効果を得ることが可能になります。期限の利益を喪失した場合であっても、諦めずにご相談ください。
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リスケジュールを行うためにはどのような書類が必要になるのですか。
通常は、経営改善計画書の作成が必要になります。
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経営改善計画書にはどのようなことを記載するのですか。
損益の計画、資金繰りの計画等を記載することになります。損益の計画には、単なる数字ではなく、具体的な行動計画(アクションプラン)を盛り込む必要があります。
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リスケジュールについて、どのようなサポートを受けることができるのですか。
当事務所は、経営改善計画書作成のサポートを行うほか、会社の代理人として、金融機関との会議(バンクミーティング)への出席や金融機関との協議・交渉等を通じてリスケジュール全般をサポートします。
また、リスケジュール成立後も、定期的に毎月の試算表を確認するなどして、経営改善計画書の進捗状況のモニタリングをサポートしますし、リスケジュールの延長の手続についても必要なサポートを行います。
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現在、顧問の会計事務所に経営改善策について相談していますが、弁護士にも相談することはできますか。
可能です。当事務所は、会社が既に相談されている専門家(税理士、公認会計士等)と情報を共有し、緊密に連携のうえ、対応します。実例としては、会社の関与会計事務所を交えて定期的に打合せを行っているケース、会社の関与会計事務所と一緒に金融機関に同行して協議を行っているケース、会社の関与会計事務所と一緒にバンクミーティングに出席しているケースなどがあります。
03
債権放棄を伴う再建の方法
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中小企業の債権放棄を伴う再建の方法について教えてください。
中小企業の債権放棄を伴う再建の方法としては、大きく分けて、法的整理手続による民事再生という方法と、私的整理手続による方法があります。
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民事再生とはどのような手続ですか。
裁判所に申立てを行い、裁判所の認可を得て、債権の一部を放棄(カット)してもらう手続です。
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民事再生の特徴を教えてください。
金融機関の債権のみならず、取引上の債権も放棄(カット)の対象になります。取引上の債権者を巻き込むため、信用不安、事業価値の毀損に繋がる場合があります。
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私的整理手続の特徴を教えてください。
通常は、金融機関の債権のみを放棄(カット)の対象にします。取引上の債権者を巻き込まないため、信用不安、事業価値の毀損という事態は生じません。
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私的整理手続で債権放棄を受けることはできるのですか。
無条件での債権の放棄(カット)は認められませんが、債権を放棄(カット)するための条件や手順を踏むことにより、金融機関の債権についてその一部を放棄(カット)してもらえることがあります。具体的には、利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理手続及びこれに準ずる手続(例えば、中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停等)を利用することにより、債権放棄が可能になる場合があります。
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会社を再建させるために、債権放棄が必要な場合、法的整理手続と私的整理手続のいずれを選択すべきですか。
ケースバイケースではありますが、一般論としては、まずは、取引上の債権者を巻き込まない手続である私的整理手続を検討することになると思われます。
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債権放棄を伴う私的整理手続を行う場合の手順を教えてください。
最終的には利害関係のない中立かつ公正な第三者が関与する私的整理手続及びこれに準ずる手続(例えば、中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム、事業再生ADR、私的整理ガイドライン、特定調停等)を利用することになりますが、これらの手続を申し立てる前には、金融機関との間で十分な事前相談・事前協議が必要になります。
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債権放棄を伴う私的整理手続を行った場合、会社の経営権はどうなりますか。
一般論としては、窮境の原因に関与した経営陣に対しては、金融機関から経営責任を求められることがあり、債権放棄と引き換えに、会社の経営から退かなければならなくなる場合があります。現経営陣が経営責任をとる場合には、スポンサーに事業を承継してもらうケースが多いです。なお、経営責任については民事再生でも同様の問題が生じます。
もっとも、実際は、ケースバイケースで金融機関と協議のうえ対応することになります。引き続き、事業の再建に対して経営者の関与が必要な場合には、経営陣として残るという選択肢もあり得るところです。当事務所が取り扱った事例においても、債権放棄を伴う案件であったにもかかわらず、経営者の一部が引き続き経営に関与しているケース、事業再建と事業承継をセットで行い、事業再建を契機に経営者が責任をとって退任したえで親族後継者へ事業を承継させたケースなどがあります。
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債権放棄を伴う私的整理手続を行った場合、株主の権利はどうなりますか。
株主の権利は、債権者の権利に劣後しますので、債権放棄を伴う私的整理手続を行った場合、株主の権利を消滅させることが通常です。具体的には、減資・株式の消却や特別清算の手続を経て、株主の権利が消滅することになります。
再建後の会社は、新たな出資を得てスタートすることになります。
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債権放棄を伴う私的整理手続を行った場合、保証人の責任をどうなりますか。
保証人の責任は当然には消滅しませんが、「経営者保証に関するガイドライン」を利用することにより、一定の要件のもとで、保証を解除してもらうことができます。
04
経営者保証に関するガイドラインについて
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「経営者保証に関するガイドライン」とはどのようなものですか。
日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」において、経営者保証に関する中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的かつ自律的な準則として平成25年12月5日に定められたガイドラインです。
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保証債務の整理について、どのようなことが規定されているのですか。
保証債務の整理の際の対応として、(1)経営者の経営責任の在り方、(2)保証人の手元に残す資産の範囲についての考え方、(3)保証債務の一部履行後に残った保証債務の取扱いに関する考え方等が規定されています。
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経営者の経営責任の在り方について教えてください。
ガイドラインは、一律かつ形式的に経営者の交代を求めないとしています。そして、具体的には、以下のような点を総合的に勘案し、準則型私的整理手続申立時の経営者が引き続き経営に携わることに一定の経済合理性が認められる場合には、これを許容することとしています。
イ)主たる債務者の窮境原因及び窮境原因に対する経営者の帰責性
ロ)経営者及び後継予定者の経営資質、信頼性
ハ)経営者の交代が主たる債務者の事業の再生計画等に与える影響
ニ)準則型私的整理手続における対象債権者による金融支援の内容
なお、準則型私的整理手続申立て時の経営者が引き続き経営に携わる場合の経営責任については、上記帰責性等を踏まえた総合的な判断の中で、保証債務の全部又は一部の履行、役員報酬の減額、株主権の全部又は一部の放棄、代表者からの退任等により明確化を図ることとする。
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経営者の経営責任について、一律に経営者の交代を求められることはないということですか。
そのとおりです。ケースバイケースで判断することになります。
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経営者の経営責任の判断基準の一つである「主たる債務者の窮境原因及び窮境原因に対する経営者の帰責性」とはどのようなことですか。
主たる債務者の窮境原因について、現経営者に責任があるのかという問題です。例えば、窮境の原因が過大な設備投資にあった場合、その過大な設備投資を行った時点での経営者には、窮境原因について責任があるといえます。他方で、過大な設備投資を行ったのは先代である場合には、現経営者には窮境原因について責任があるとは認められないと考えます。
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経営者の経営責任の判断基準の一つである「主たる債務者の窮境原因及び窮境原因に対する経営者の帰責性」に関して、社長が独断で経営していた場合において、他の取締役の責任はどうなるのですか。
窮境原因に対する責任は実質的に判断されますので、例えば、社長が独断で経営しており、他の取締役の関与の度合いが小さい場合には、他の取締役は窮境原因について責任がないと判断される余地はあると考えます。
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経営者の経営責任の判断基準の一つである「経営者及び後継予定者の経営資質、信頼性」とはどのようなことですか。
例えば、現経営者に信頼があるのに対して、後継予定者が育っておらず、後継予定者にバトンタッチすることが困難な場合等が考えられます。このような場合は、後継予定者が育つまでの一定期間について、現経営者が続投するということが考えられます。
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経営者の経営責任の判断基準の一つである「経営者の交代が主たる債務者の事業の再生計画等に与える影響」とはどのようなことですか。
例えば、主たる債務者の事業が経営者の信用で成り立っており、経営者が交代することにより、事業計画に大きな影響が生じる場合等です。
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経営者の経営責任の判断基準の一つである「準則型私的整理手続における対象債権者による金融支援の内容」とはどのようなことですか。
金融支援の内容が、リスケジュールなのか、債権放棄を含むものなのかどうかによって、経営者責任に影響が出るということです。後者の場合は、金融機関は損失を伴いますので、経営者にもそれなりの責任をとってもらうということになるのです。
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保証人は保証債務を整理するに際して、資産を残すことはできるのですか。
経営者保証に関するガイドラインにより一定の資産を残すことはできます。
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手元に残せる資産の範囲についての考え方を教えてください。
経営者保証に関するガイドラインの規定は次のとおりです。
「7.保証債務の整理
(3)保証債務の整理を図る場合の対応
③保証債務の履行基準(残存資産の範囲)
対象債権者は、保証債務の履行に当たり、保証人の手元に残すことのできる残存資産の範囲について、必要に応じ支援専門家とも連携しつつ、以下のような点を総合的に勘案して決定する。この際、保証人は、全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うとともに、支援専門家は、対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の適正性についての確認を行い、対象債権者に報告することを前提とする。なお、対象債権者は、保証債務の履行請求額の経済合理性について、主たる債務と保証債務を一体として判断する。
イ)保証人の保証履行能力や保証債務の従前の履行状況
ロ)主たる債務が不履行に至った経緯等に対する経営者たる保証人の帰責性
ハ)経営者たる保証人の経営資質、信頼性
ニ)経営者たる保証人が主たる債務者の事業再生、事業清算に着手した時期等が事業の再生計画等に与える影響
ホ)破産手続における自由財産(破産法第34条第3項及び第4項その他の法令により破産財団に属しないとされる財産をいう。以下同じ。)の考え方や、民事執行法に定める標準的な世帯の必要生計費の考え方との整合性」
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手元に残せる資産の範囲に関し、資力情報の開示が必要になるのですか。
そのとおりです。まずは、保証人の資力情報を正確に開示することが求められています。具体的には、現金、預貯金、有価証券、生命保険(解約返戻金)、不動産等の資産の目録を作成して、金融機関に提出することになります。
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資力情報の開示の際に、通帳等の資料も提出しなければならないのですか。
資力情報の正確性を担保するために、通帳等の資料を提出する必要があります。
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資力情報の開示に際し、仮に、隠し資産が後から発覚した場合にはどうなるのですか。
その場合は、隠し資産を保有できなくなりますし、保証債務の免除も認められなくなる可能性があります。
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資産目録を作成する際の留意点を教えてください。
倒産処理事件に精通している弁護士等の専門家に依頼して、資産目録の内容をチェックしてもらうのが良いと考えます。
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手元に残せる資産の範囲に関し、預貯金はどのくらい残すことができますか。
生活費等が引き落とされている流動性の預金(普通預金)については、残存資産として認められる傾向があります。もっとも、生活費等の額を勘案しても、多額の残高がある場合(例えば99万円を超えるような場合)には、一定の金員を保証債務の弁済に充てなければならない可能性があります。
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手元に残せる資産の範囲に関し、有価証券について教えてください。
株式(特に上場株式)は、通常は生活資金とは認められませんので、原則として、売却して保証債務の弁済に充てることになると考えます。投資信託についても同様です。これに対し、非上場株式については、換価が困難なものもありますので、そのような場合には、換価価値がないということで残存資産として認められる可能性があります。ゴルフ会員権についても同様のことがあてはまります。
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手元に残せる資産の範囲に関し、保険について教えてください。
保険については、まず、解約返戻金を算出します。掛捨ての保険であり、解約返戻金がない場合には、残存資産として認められると考えます。これに対し、一定の解約返戻金がある場合は、解約返戻金の額、当該保険の性質、当該保険を存続させる必要性等を踏まえて判断されることになります。保険には、生活保障という観点がありますので、この点を金融機関に丁寧に説明して理解を求める必要があります。
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手元に残せる資産の範囲に関し、不動産について教えてください。
自宅以外の不動産については、原則として、売却して、売却代金を保証債務の弁済に充てなければなりません。但し、当該不動産が事業用のものであり、事業の再生に必要である場合には、評価額に相当する金員を金融機関に支払うなどして、当該不動産を残存資産にするという方法もあり得ると考えます。
次に、自宅については、経営者保証に関するガイドラインにおいて、一定の要件を見たす場合には、「華美でない自宅」を残存資産に含ませることを認めています。例えば、自宅が事業用の店舗を兼ねており、資産の分離が困難な場合などは、残存資産として認められる可能性があります。また、これに該当しない場合であっても、保証人の居住権を確保するという観点から、自宅を売却する代わりに、自宅の公正な価額に相当する額を分割払いすることで、残存資産として認められる可能性があります。
「華美でない」とは、常識的に考えて、豪華すぎないということであり、通常人から見て、豪邸でない限り、「華美でない」ということになると考えます。また、「公正な価額」とは、不動産鑑定士の不動産鑑定評価によります。そして、鑑定価額については、早期処分を前提とした「特定価額」を基準にします。自宅を残そうとする場合には、最低でも、「特定価額」を踏まえた金額を支払う必要があります。分割払いを求める場合、その期間については金融機関との協議次第ですが、民事再生の場合の弁済期間が最長でも10年(個人再生の場合は5年)ですので、これらの期間が目安になるのではないかと考えます。
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華美でない自宅を残すための条件はありますか。
債権者にとって経済合理性が認められる限度という条件があります。例えば、会社が破産した場合の債権者の回収見込額が2000万円、会社が再生した場合の債権者の回収見込額が3000万円であったと仮定します。この場合、回収見込額の増加額は1000万円ということになり、これが残せる資産の上限ということになるのです。したがって、例えば、華美でない自宅が800万円であれば、1000万円の範囲内ですので残存資産として残せる余地がでてきます。
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保証債務の整理を開始する時期について注意することはありますか。
保証債務のみを整理する場合、主たる債務の整理手続の終結後に保証債務の整理を開始した場合は、自宅等を残すことが認められなくなる場合があります。早めに整理手続に着手する必要があります。
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経営者保証に関するガイドラインに基づいて、最終的に保証を外してもらうことはできるのですか。
一定の条件を満たせば、保証債務が免除されることがあります。
経営者保証に関するガイドラインの規定は次のとおりです。
「7.保証債務の整理
(3)保証債務の整理を図る場合の対応
⑤保証債務の一部履行後に残存する保証債務の取扱い
以下の全ての要件を充足する場合には、対象債権者は、保証人からの保証債務の一部履行後に残存する保証債務の免除要請について誠実に対応する。
イ)保証人は、全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うこととし、支援専門家は、対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の適正性についての確認を行い、対象債権者に報告すること
ロ)保証人が、自らの資力を証明するために必要な資料を提出すること
ハ)本項(2)の手続に基づき決定された主たる債務及び保証債務の弁済計画が、対象債権者にとっても経済合理性が認められるものであること
ニ)保証人が開示し、その内容の正確性について表明保証を行った資力の状況が事実と異なることが判明した場合(保証人の資産の隠匿を目的とした贈与等が判明した場合を含む。)には、免除した保証債務及び免除期間分の延滞利息も付した上で、追加弁済を行うことについて、保証人と対象債権者が合意し、書面での契約を締結すること」
05
廃業支援スキーム
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会社の廃業を考えていますが、どのように進めていけば良いですか。
会社の資産、負債の状況を確認したうえで、方針を検討することになります。
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資産が負債を上回る場合はどうなりますか。
資産により負債を弁済できますので、通常の方法で会社を清算することになります。株式会社について、残余財産が生じた場合はこれを株主に分配して清算を結了します。
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負債が資産を上回る場合はどうなりますか。
この場合は資産により負債の全額を弁済できませんので、通常の方法で会社を清算させることはできず、債務整理を行わなければなりません。
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会社を廃業するにあたり、公租公課はもちろん、商取引上の債務は弁済できそうですが、金融機関からの借入金については全部を弁済できそうにありません。長年商売を続けてきたので破産は避けたいのですが、どのように対応すれば良いですか。
金融機関の理解を得て商取引上の債務を弁済し、金融機関からの借入金のみを対象にして、債務整理を行うという方法が考えられます。これを廃業支援スキームといいます。
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廃業支援スキームのメリットを教えてください。
早期に廃業を決断することにより、資産の劣化を防止し、会社の破産手続を回避し清算を行うことができ、商取引上の債権者を巻き込むことなく、破産による廃業という風評被害を回避することができることです。
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金融機関は廃業を支援してくれるのですか。
2015年4月に金融庁より発出された「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」によると、金融庁は、取引金融機関に対し、「Ⅱ-5-2-1 顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮」の「(2)最適なソリューションの提案」として、顧客のライフステージごとに措置を講じるよう求めています。そして、「事業の持続可能性が見込まれない顧客企業」に対するコンサルティング機能の一場面が廃業支援(「顧客企業が自主廃業を選択する場合の取引先対応等を含めた円滑な処理等への協力を含め、顧客企業自身や関係者にとって真に望ましいソリューションを適切に実施」)であり、金融庁は、取引金融機関に対し、コンサルティング機能を発揮し、外部専門家を活用し、廃業支援に取り組むよう求めているのです。
したがって、もちろん無条件にではありませんが、金融機関は廃業支援に協力してくれます。
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金融機関の理解を得ることはできるのですか。
本来は、商取引上の債務と金融機関からの借入金は平等に取り扱わなければなりません(債権者平等の原則)。商取引上の債務を優先的に弁済するためには、不利益を受ける金融機関の了解が必要になります。了解を得るうえでのキーワードは経済的合理性です。経済的合理性とは、事業者の主たる債務及び保証債務について、任意整理を行ったほうが、破産手続による配当よりも多くの回収を得られる見込みがあるかという観点から判断されることになります。つまり、商取引上の債務を弁済したとしても、なお、破産よりも多くの満足を金融機関に与えることができるので、不平等な取扱いを認めてくださいということになるのです。
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経済的合理性が認められれば金融機関の理解を得ることはできるのですか。
経済的合理性は必要条件であって十分条件ではありません。経済的合理性のほかにも、事業者や保証人が債権者に誠実であるかといった定性的な要素も重要になると考えます。
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廃業支援スキームをどのように進めていくのですか。
通常は、金融機関を対象にしてバンクミーティングを開催し、廃業せざるを得ないこと、廃業支援をお願いしたいこと等の申入れを行います。その際、会社の資産、負債や資金繰りの状況等を正確に開示することが必要になります。
その後は、金融機関の意向等を踏まえて、意思疎通を図りながら、手続を進めていくことになります。
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廃業支援スキームについて弁護士の支援を受けることはできますか。
代理人して廃業支援スキームをサポートすることができます。
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廃業支援スキームのルールはあるのですか。
日本弁護士連合会が策定した「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」が参考になります。
参照:日本弁護士連合会HP
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廃業支援スキームを利用した場合、保証債務はどのようにして整理すれば良いのですか。
保証債務については経営者保証に関するガイドラインを利用して整理することが考えられます。
06
特定調停手続
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特定調停手続により負債を整理できると聞きましたが、どのような方法があるのですか。
特定調停とは、支払不能に陥るおそれのある債務者の経済的再生を図るために、裁判所による調停手続において、公正中立な調停委員の関与のもとで、話合いにより債務を整理する方法です。根拠となる法律は、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(いわゆる特定調停法)です。
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特定調停手続でどのようなことができるのですか。
債務のリスケジュールや減免の合意をすることが可能です。
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債務のリスケジュールや減免を行う場合のルールはあるのですか。
特定調停法のほか、日本弁護士連合会が策定した「特定調停利用の手引」が参考になります。
参照:日本弁護士連合会HP
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特定調停手続において、実質の債権放棄を前提とするM&Aによる再生や、第二会社方式による再生を行うことはできますか。
金融機関の理解を得て、実質の債権放棄を前提とするM&Aによる再生や、第二会社方式による再生を行うことも可能です。
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特定調停手続において、廃業支援スキームを利用することは可能ですか。
可能です。
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特定調停手続において保証債務を整理することは可能ですか。
可能です。手続については、日本弁護士連合会が策定した「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキームの手引き」が参考になります。
参照:日本弁護士連合会HP
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特定調停手続について弁護士の支援を受けることはできますか。
代理人として特定調停手続をサポートすることができます。
07
破産手続
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破産手続とはどのような手続ですか。
裁判所の関与のもと、破産管財人が破産者の財産を管理、換価し、債権者に対して配当を行う手続です。清算型の手続ですので、事業は解体清算されるのが原則であり、従業員も解雇されることになります。
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破産手続を選択するのはどのような場合ですか。
当事務所は、①「清算」ではなく「再生」を目指し、②廃業の場合であっても、「破産」ではなく、廃業支援スキームによるソフトランディングを目指します。
他方で、再生ができず、かつ、廃業支援スキームによるソフトランディングもできない場合に、やむなく破産手続を選択することになります。
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会社が破産すると、保証人も破産をしなければなりませんか。
必ずしも破産しなければならないということではなく、経営者保証に関するガイドラインを利用して保証債務を整理することも可能です。
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破産手続について弁護士の支援を受けることはできますか。
代理人として破産手続をサポートすることができます。
08
民事再生手続
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民事再生手続とはどのような手続ですか。
裁判所の関与のもと、再生債務者が事業を継続しながら、債権のカットを伴う再生計画案を作成提出し、債権者の多数の賛成・裁判所の認可を得たうえで、再生計画案に基づき弁済を行う手続です。再建型の手続ですので、事業は維持継続されるのが原則です。
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民事再生手続のデメリットは何ですか。
裁判所が関与する公正な手続ですが、商取引上の債務も債権カットの対象になりますので、倒産という風評被害や信用不安が生じてしまう点がデメリットであると言われています。
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民事再生手続を選択するのはどのような場合ですか。
商取引上の債務が多く、これらについても債権のカットをしなければ事業の再生ができない場合が考えられます。また、金融機関や主要な債権者の意向、スポンサー候補者の意向等により民事再生手続を選択する場合もあります。
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会社が民事再生すると、保証人は破産をしなければなりませんか。
必ずしも破産しなければならないということではなく、経営者保証に関するガイドラインを利用して保証債務を整理することも可能です。
また、保証人についても民事再生手続の利用を検討することも可能です。
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民事再生手続について弁護士の支援を受けることはできますか。
代理人として民事再生手続をサポートすることができます。
09
その他
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会社の再建手続について、どのようにして手続を選択すれば良いのですか。
各手続については、それぞれメリット、デメリットがありますし、会社の規模、事業の内容、負債の額、債権者数等のほか、会社の定性的な事情も手続選択に影響を与えます。当事務所は、経営者から十分にヒアリングを行い、経営者の意向を最大限尊重したうえで、最適な手続を提案するよう努めます。
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会社再建についてセカンドオピニオンを求めることはできますか。
可能です。